写真の整理をしていたら、よくわからない建物?ドーム?の写真がありました。
調べてみたところ、「フランス共産党本部ビル」(Siège du Parti communiste français)という建物の一部でした。
調べてみるまで全く知らなかったのですが、「オスカー・ニーマイヤー」というブラジルの超有名な建築家の作品でした。
都市ごと世界遺産となった「ブラジリア」を設計した、有機的なフォルムが特徴的な建築家です。
そんな彼の仕事と、この建物のデザインについて調べてみました。
この記事はこんな人におススメです!
・近代建築ファン!変わったデザインの建物が好き!
・オスカー・ニーマイヤーが好き。彼のことを詳しく知りたい。
・とりあえず、写真中央のこの白い丸いのは何?気になる。
オスカー・ニーマイヤーって?
1907年にブラジルで生まれ、1967年(60歳)~1987年(80歳)頃、パリに亡命(?)していた、モダニズムの建築家です。
なんと104歳まで長生きしていて、亡くなったのは2012年と比較的最近です。
無くなる前年の2011年に、自身の名前の付いた美術館(ニーマイヤー文化センター)をスペインに建築した、大変パワフルな方です。
本名はオスカー・リベイロ・デ・アルメイダ・ニーマイヤー・ソアーレス・フィーリョ(ポルトガル語: Oscar Ribeiro de Almeida Niemeyer Soares Filho)長っ。
1960年代から1980年代中盤にかけてのブラジルの軍事政権下において、左翼的な政治志向が嫌われ、ブラジルでの設計活動を禁止されてしまいました。
30代のころブラジルの設計事務所で働いていた際に、かの有名なル・コルビジェを設計顧問として仕事をしていたことがあり、彼の影響を受けているようです。
ルーブル美術館で彼自身の展覧会の開催が開催された折実際にパリを訪れているなど、何かとパリとは縁があったようです。
フランス共産党本部ビル以外に有名な作品はあるの?
なんと、彼は生涯に2,000の建築を手がけたといわれる、超多作建築家です。椅子などの小さいものから、住宅、教会、公園、美術館、都市そのものなど多岐にわたります。
代表作と言われるサンパウロの「イビラプエラ公園」(Parque Ibirapuera) の写真を探したのですが、どうもものすごく広大らしくて写真だと良くわかりません。
公園そのものと、公園内の建物をまとめて設計しています。
イビラプエラ公園はロバート・ブール・マルクスとの共同設計で、1954年にサンパウロ市政400年を記念して作られました。
1,584平方キロメートルという超広大な敷地内に、美術館やイベント会場、噴水など様々な施設が点在しています。
この写真の「劇場」(Ibirapuera Auditorium)は比較的新しい建物で2005年に作られたものですが、施設内の他の建物は概ね1951年に作成されたものです。
こちらは「ブラジリア大聖堂」。ブラジルの首都、ブラジリアにあるカトリックの大聖堂です。
教会の内部は柱がなく、広々とした空間になっています。天井から3体の天使像が吊り下げられています。
外側の大きな梁で全体を支える構造となっており、梁と梁の間はガラスではなく、透明繊維強化プラスチックパネルです。
保守的なイメージが強いカトリック教会が、よくぞこんな大胆な設計を許したな、と驚きました。
かなりの面積が透明なパネルなので、天気の良い日はさぞ明るくて素敵な空間になりそうです。
そしてこちら、世界遺産登録された都市としては、異例の若い都市、「ブラジリア」です。
写真は、テレビ塔にある展望台から撮れる写真です。
世界遺産に登録されている都市といえば、チェコにある「プラハ歴史地区」や、フランス南部の「リヨン歴史地区」など歴史的な、古い町並みのイメージが強いのではないでしょうか。
ところがブラジリアは、何もなかった高原の荒れ野に1960年に建設され、1987年に世界遺産に登録されています。
歴史が古い町並みの登録は過去に何件も登録されていましたが、建設から30年以内の近代都市が世界遺産に登録されたのは、当時全くの異例のことでした。
20世紀のユニークな計画都市そのものが、モダニズム建築を表現したとものして世界遺産登録されました。
ブラジルの首都であるブラジリアの中には、当然様々な建物があり、それら全てを含めて世界遺産です。
先ほど紹介したブラジリア大聖堂(Catedral Metropolitana Nossa Senhora Aparecida)もその一つですし、有名なものとしてはプラナルト宮殿(Palácio do Planalto)、国会議事堂(Congresso Nacional)、連邦最高裁判所(Supremo Tribunal Federal)、ドンボスコ聖堂(Santuário São João Bosco)、国立美術館(MUSEU Nacional da República)、ジュセリーノ・クビチェック橋(Juscelino Kubitschek Bridge)などです。
ちなみに、「ブラジリア」の紹介で使用した公園の画像は、この地図でいうところのブラジリア大聖堂の「ア大聖」の部分にあたる公園です。
都市の大きさが推察されると思います。観光で利用できる電車もないので、行く際には車を手配するか、現地で自転車を借りる必要があります。
そしてなんと、こちらの動画は「スケボープレイヤーがニーマイヤーの建築で滑ってみた」です。
確かに滑れそう!とは思いますが、本当に滑ってしまうとは…レッドブルのプロジェクトです。
ご紹介したイビラプエラ公園やブラジリアも出てくるので、ニーマイヤーの建築を多角的に見ることができて面白いです。
滑り台を逆から登る小学生みたいなことを、世界遺産の名建築でやってしまうという、ハラハラする映像が楽しめます。
こちらの記事↓↓で紹介されていたもので、記事下部には、映像内に出てきた建築物のリストが掲載されています。真面目な解説もあります。
https://www.adfwebmagazine.jp/architect/architecture-and-physicality-1-oscar-niemeyer/
日本でのオスカー・ニーマイヤー
日本では、2015年に東京都現代美術館でオスカー・ニーマイヤー展を行ったことがあり、その時のページがまだ残っています。
様々な大きさで模型を作成したり、広大なイビラプエラ公園の30分の1の模型を約500㎡の空間に再現、また、映像資料も展示されていたようです。
こちらのYouTubeで、プリツカー賞も受賞している建築家西沢立衛(にしざわりゅうえ)さんのインタビューなどが聞けます。
結局フランス共産党本部ビルの白い丸いのは何
白いドームは、フランス共産党の国家評議会を収容しています。どうも、「妊婦の腹」を表しているようです。
言われてみると、そんな気もしてくるような…
ニーマイヤー自身の言葉に、以下のようなものがあります。
「私は、人間によって作成された、硬くて柔軟性のない直線や直線に惹かれません。流れるような官能的な曲線に惹かれます。
私の国の山々、川のしなやかさ、海の波、そして最愛の女性の体に見られる曲線。
曲線は、アインシュタインの提唱する湾曲した宇宙である宇宙全体を構成します。」
彼の建築を見ると、やわらかな曲線が多いのも頷ける言葉です。
このドーム部分の素材はコンクリートを樹脂で覆い、白く塗装したものです。
中は、こんな風になっているようです。
Googleストリートビューでウロウロすると、大きさやドームの感じが伝わるかと思います。
ブラジルにいたときからずっと共産主義だったニーマイヤー。
これは完全な想像になりますが、「妊婦のお腹」を共産党の建物にすることで、
女性や赤ちゃんといった、弱い立場の人達への目線を大切にすることを表したかったのかもしれません。
アクセス
住所:2 Pl. du Colonel Fabien, 75019 Paris, フランス
この建物のWiki:https://fr.wikipedia.org/wiki/Si%C3%A8ge_du_Parti_communiste_fran%C3%A7aishttps://www.pcf.fr/
道を歩いていると、突然現れる白い大きなドームと、曲線で構成されたビルは、なかなかインパクトがあります。
移民も多く、観光スポットからは外れた、ちょっと治安が不安視されがちな19区にあるこの建物。
調べてみたら、こんなに有名な建築家の物だったとは、思いもしませんでした。
ちなみに、この写真を見せたとき、子供は「ふわふわドーム?」(関東近郊大型公園にある遊具)と聞いてきましたが、全くふわふわはしていませんし、上って遊ぶことはできません。