私の彫刻リテラシー
フランスに行く前からアートが好きで、月に2回くらいはどこかの美術館に出掛けていました。でも、そこで見るのはほとんどが絵画。彫刻の企画展というのは、ほとんど見かけたことがなかったし、あったとしてもわざわざ出掛けて行ったことはありませんでした。そもそも彫刻を沢山見る機会なんて、箱根の彫刻の森美術館に行った時くらいで、後は美術館の外や、出入り口付近に時々置かれているのを見かけるくらいで、あまり「鑑賞」したことなんてありませんでした。だから、彫刻リテラシーは、ものすごく低かったんです。
ルーブルで彫刻の素晴らしさに出会う
そんなわけで、あまり彫刻に興味がないまま、ルーブル美術館にはあくまで絵画を見に行っていました。もちろん絵画も大量で、そうそう見切れるわけではないのですが、ルーブルはもしかしたら全体の展示物は彫刻のほうが多いのではないでしょうか。「彫刻」と一括りにするにはあまりに大量の古代のエジプト、オリエント、ローマの美術品があり、またイタリア彫刻、フランス彫刻とあるのです。
絵画は壁に掛けられている物をこちらから「眺める」ため、ある程度「鑑賞者」として距離を取ることができます。ところが彫刻はそこに先に存在しているため、なんというか、動けないだけで「存在感」がばっちりあります。等身大か、実物より大きく作られることも多い彫刻がずらりと並ぶ部屋に入ると、絵画が多い部屋より圧倒的に「視線」を感じます。
彫刻の良さに気づく
沢山の彫刻に囲まれながら、周囲をぐるぐる見て回って、彫刻の良さがだんだんわかるようになりました。
まず何と言っても365度好きな位置、好きな角度から眺めることができます。これは、絵画にはない圧倒的なポテンシャルです。この3D性を絵画にも与えようとして、近代美術では絵画に切れ目を入れたり表面に色々くっつけてテクスチャーを表現したりと2.5D~3次元、果ては4次元に挑戦している作品がいくつかあります。これも、最初見たときはものすごく驚いて、強烈に覚えています。(切れ目を入れた人:ルーチョ・フォンタナ)
そして、やはりその存在感。絵画は、額縁の向こうの物語を眺めている感覚なので、「別世界」を見ている感じです。もちろん、それが楽しいし、そこにストーリーが感じられます。ところが彫刻は、「そこ」に存在しているので、大昔に作られたのにもかかわらず、「今」を共有している感覚があるのです。昔々の大傑作。その表現が優れていればいるほど、今、その石の台から降りてきて動き出しそうなのです。その場にいると、不思議な感覚があります。生きているはずないのに、あまりにリアルなため、「いや~、ずっとこのポーズでいるから肩こっちゃって」なんて言い出して、うーんと伸びでもしそうなのです。ついつい、そんな、「動くんじゃないか」というあり得ない思いで見てしまうのも彫刻の面白さだと思います。
私流彫刻の楽しみ方
アートの楽しみ方は人それぞれです。感じ方も、捉え方も、決まりなんてありません。特に、彫刻に関して歴史もルーツも技術も全く分からない私は、絵画よりいっそ気楽に、そのまま、ありのままの彫刻達との邂逅を楽しみました。
筋肉ムキムキな肉体美がもてはやされたイタリア彫刻。力強いフランス彫刻。優雅な曲線で表される古代ローマ彫刻。神様を模した、エジプト彫刻。もう、ありとあらゆる彫刻を見て、やっぱり一番ぐっとくるのはやっぱり美女です。
人間なら、どんなに美人でも、あんまりじろじろ見ていたら気味悪がられます。お姉さん、いいおしりしてるね、なんて話しかけようものなら、即お巡りさんに御用となります。でも。彫刻なら。見放題なのです。
見事なおしりの美女3人。ほら、左下のお兄さんもじっと見つめています(デッサンの練習中でした)
窓際でいつもきれいな背中とおしりを見せてくれる美女。足元の何が気になるのでしょう。この、下に敷いてあるシーツがまたなんとも色気を誘います。
こちらのお姉さんはしどけなく横たわり、全裸で向こうを見つめています。無防備すぎます。こんなに素敵なおしりや背中を眺めまくっても、まじめに美術品を鑑賞している人にしか見えないなんて最高です(コラ)
大変不真面目な感じになっておりますが、これだけ美女の全裸彫刻が最高の状態で沢山残っているということは、きっと大切に保管されていて、ずっとずっと誰かに愛でられてきたのでしょう。それが、時を経て今私が邪な目で眺めてなんの問題がありましょうか。もしかしたら、生きている人間にはできないから、こんなに素敵な彫刻を眺めることで心を満たしていた人が一定数いたのではないでしょうか。
ムキムキを見るのも、セクシーを見るのも、アートの世界なら自由です。絵画で、「教会に飾る絵なのに内容がセクシーすぎる」とか「セクシーな絵を発注していいのが届いたのに、奥さんが怒って描き直させた」とかいうエピソードはいくつもあるのですが、彫刻はどうなのでしょう。お屋敷や教会を飾っていたであろう彫刻達は、どのような経緯でルーブルに来たのか…奥深い世界に興味を持つきっかけを与えてくれた、美しいおしりに感謝です。