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ルーブル美術館から歩いてすぐの場所に、「オランジュリー美術館」はあります。パリの美術館と言えば、ルーブル、オルセー、ポンピドゥー、の3つが古い順に有名だと思います。
しかしこの「オランジュリー美術館」は、晩年のクロード・モネの超大型作品を展示するためだけの贅沢な空間で、「睡蓮」が好きな方にはぜひ訪れてほしい美術館です。
天井からは自然光が入り、部屋の中には4枚の大きな絵が展示されています。自然光の移り変わりを捉えようと、何枚もの作品を残したモネの思いに応えた美術館となっています。
この記事はこんな人におススメです!
・ルーブル美術館近くでほかの美術館も行きたい
・モネの作品が大好き
・オランジュリー美術館がどんなところなのか知りたい
モネの睡蓮って?
モネの「睡蓮」をモチーフにした絵は、なんと200枚以上存在しています。
「睡蓮」を描き始めるきっかけは1883年、モネが43歳の時に、パリから西に直線距離で65キロのジヴェルニーに移り住むところから始まります。
当時絵のモチーフを探してあちこちを旅行していたモネは、たまたまアクシデントで列車が止まってしまったジヴェルニーが気に入り、リンゴ農園の中にあった家を借り、その後購入しています。
10年後には、近くを流れていた川から水を引き込み、庭に池を作って、1895年にはその池に「日本風の橋(太鼓橋)」を架けています。
日本でよく見られる朱色ではなく、緑色でペイントしたその橋が、最初は絵のモチーフでした。
1895年に橋が完成して、睡蓮が根付いた55歳のころ、1枚目の睡蓮を描いています。
その後、数年間の間に何枚も睡蓮を描いていますが、最初のうちは睡蓮というより、「池と橋」「橋を中心にした植物と池」という様相です。
それが、時代が下って来るにしたがって橋が登場しなくなり、「睡蓮」もしくは「水面とその映り込みと睡蓮」という絵に変わっていきます。
70歳もすぎたころですが、最も精力的に制作を行った1914年から1919年の間に、「睡蓮」を67点も制作し、これらはみな、かなり大型の作品となっていました。
モネは自身の「睡蓮」の大壁画を国に寄贈しようと考え、友人のクレマンソーに政府への仲介依頼をしています。
ただ、時は1918年、第一次世界大戦においてドイツとの休戦協定が締結されたばかりのタイミングで、フランスは財政難でした。
その後、1921年に今のオランジュリー美術館の位置にあった、テュイルリー宮殿のオレンジの温室だった場所を改装することで、無事にモネの超大型睡蓮を飾ることができるようになりました。
オランジュリー美術館が開館したのは1927年で、モネはその半年前に86歳で亡くなってしまいました。
そのため残念なことに、自身でオランジュリー美術館に飾られた睡蓮を見ることは叶いませんでした。
オランジュリー美術館内部の写真
オランジュリー美術館は、大きな部屋が2つの、規模としては小さい美術館です。
しかし、圧倒されるのは展示されている絵の大きさです。
縦2m×横8m以上にもなる巨大な「睡蓮」が4枚、美術館の壁に沿って弧を描きながら展示されています。部屋中ぐるっと全部「睡蓮」です。
こんなに大きな絵に囲まれる機会もなかなかないですし、部屋の中央に置いてある椅子に座ってのんびり見るもよし、近づいて部屋を一周しながら見ても良し、鑑賞者も思い思いの方法で好き勝手に鑑賞しています。
なにより、大きな天窓から差し込む自然光からの光で、天気のいい日は明るく、曇天の日は鈍く、日によって表情が変わる展示となっています。
毎日自宅の庭の自然と向き合いながら絵画制作をつづけたモネが夢想した、大きな絵に囲まれる部屋を体感をすることができます。
もともとはオレンジの温室だったこの建物は基本的に日当たりが良く、また白い壁が部屋全体を明るく見せています。
それなりに観光客もいる場所なので、のんびり独り占め、とは行きませんが、混雑しがちなオルセーなどと比べると、圧倒的にゆっくりモネの作品を鑑賞できます。
巨大な「睡蓮」を眺め続けていると、池の水面の小さなさざ波や、ふわっと柳が揺れるような感覚がしてくる、不思議な感覚に陥ります。
沢山の作品を見るのではなく、落ち着いた空間でゆったりと作品と向き合える素敵な美術館です。
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アクセス
公式Webサイト(仏語):https://www.musee-orangerie.fr/
住所:Jardin des Tuileries, 75001 Paris, フランス
営業日時:月曜日~日曜(火曜を除く)午前9時~午後6時まで
最終入館は午後5時15分、閉室は午後5時45分
お休み:火曜日、5月1日、7月14日午前、12月25日
ミュージアムパス(PARIS MUSEUM PASS):利用可能
一般的な大人の入場料:12.5ユーロ
アクセスについての詳細(仏語):https://www.musee-orangerie.fr/fr/visite-orangerie
なんと、公式ページではオンラインでモネの絵8枚をぐるっと見ることができます!
2020年に改修が行われたようで、ルノワールやマティス、セザンヌやピカソなどの作品も収蔵されたようです。
絵を見る、というより、ぐるっと大きな絵に囲まれる、というちょっと珍しい体験をぜひお勧めします。