彫刻家としては超有名、知らない人はいないほど有名なロダンの美術館についてです。
この美術館は、ロダン美術館というだけあって、彫刻ばかりを展示している、ちょっと珍しい美術館です。
お庭もきれいで、お庭にも大型の彫刻が展示してあり、見ごたえ抜群の美術館です。
この記事はこんな人におススメです!
・ロダンの作品が好き。彫刻をたくさん見たい!
・ロダンの弟子の女性彫刻家、カミーユ・クローデルの作品が見たい!
・パリ中心部で美しいフランス式庭園でお茶したい!
目次
フランソワ=オーギュスト=ルネ・ロダン(François-Auguste-René Rodin)の作品
ロダン美術館に解説があるものは、画像をクリックすると解説に飛ぶようになっています。
ロダン本人についての説明は、このページでは概略にて。別の記事で書くかも。
実は彫刻の技術を学校で習っていないロダン。工芸学校という絵画やデッサンを教える小学校には行っていたものの、その後のグラン・エコールに3年連続不合格。
一時は修道士を目指すものの、「向いていない」と言われて動物彫刻家に弟子入り。装飾職人として、長く苦労の道を歩み、ベルギーで働き、
そのお金でイタリア旅行をしてドナテッロとミケランジェロの彫刻に衝撃を受け、十数年ぶりに彫刻家として活動を再開したと言います。
ロダンがベルギーで働いていたころに制作された、「目覚めた男」または「征服された男」とも言われる最初の作品です。
あまりにもリアルだったため、本物の人間から型を取ったのではないかと非難を受けました。
ロダンは怒って、二年後にもっと大型の作品を作って、審査員に自分の技術であると知らしめたそうです。
これがきっかけでロダンは有名になり、「地獄の門」の受注に繋がったといいます。
40過ぎてから彫刻家として評価されたという遅咲きの割に、作品点数は驚くほど多く、
ロダン美術館ではロダン自身の作品は6600点もの彫刻、7000点のデッサンと膨大な量の作品を所蔵しています。
また、ロダン自身が収集した絵画や彫刻もあるので、かなりのボリュームです。
非常に小さい作品から、屋外にある大型の作品、地獄の門や考える人、カレーの市民など超有名作品も勢ぞろいなので、大変見ごたえがあります。
聖書で最初に創造された女性、「イヴ」「エヴァ」とも呼ばれます。
対になる「アダム」はこちら。庭にいます。実は「イヴ」も庭にもいます。
アダムを左に、イヴを右に並べると、お互い顔を背けて、そっぽを向いています。
絵画では、割と仲睦まじく描かれることが多い二人ですが、ロダンの作った二人は
地獄の門の両脇に並べる用に作られた二人。
神様から食べてはいけないと言われていた「知恵と知識の実」をヘビの誘いで食べてしまったことで、
自分たちが裸であることに気づき、恥じらい、罪の意識で顔を背け、腕で体を抱きしめながら表情を隠そうとしているように見えます。
人類最初の罪人としても認識される二人を、「地獄の門」の両脇に配置するとは、なかなかオツな趣向です。
上野の国立西洋美術館の「地獄の門」の両脇には、並べられた二人を見ることができます。
素材も様々ですが、大理石の塊から掘り出される途中のような作品も多く、
「素材」と「作品」の中間として、なんだか不思議な感覚がします。
石のざらっとした質感と、磨かれてつるつるになった表現の差が、「石から生まれた」ようでとても魅力的です。
石の塊を包み込むような大きな手。
手の内側には、なんと女性の姿が。写真では見づらいのですが男性もいます。神に作られた最初の人、アダムとイブと言われています。
大きな手に包まれて、卵の中で丸くなっているようなポーズで表現されています。
「神の手」シリーズは、微妙に形を変えて何パターンもあるようです。
大きな「歩く男」。こちらも頭と腕がなく、胴体と足だけの姿で「歩く」様子が力強く表現されています。
きっと夜には館内をのしのし歩いているのでしょう。
見ているのが恥ずかしくなるくらい熱々のお二人の「キス」。
こちらも大きな作品で、男女の筋肉や脂肪の違いがとてもよく表現されていて、生々しいほどです。
「地獄の門」のてっぺんにいる3人の大きいバージョンです。みんな首が疲れそうなポーズをしています。
ロダン美術館以外にも、上野の国立西洋美術館にもある「地獄の門」。世界に10体(うち2つは石膏)あるそうで、なんとそのうち4つは日本にあるのだとか。
日本から、「白樺派」と呼ばれる人たちがロダンに手紙を送ったところ、「浮世絵と私のデッサンを交換しよう」と返事が来て、
日本から喜び勇んで30枚浮世絵を送ったところ、ロダンから彫刻が3点送られてきて狂喜乱舞したという話があり、ロダンは浮世絵にも興味があったようです。
白樺派とのやり取りはこちらに詳しいです:https://www.shirakaba.gr.jp/tenmatu_ki/home/tayori/ctayori11.htm
40歳でこの「地獄の門」の製作依頼を受けてようやく彫刻家として認められるようになったロダン。
結局「未完」と言われていて、亡くなる直前まで40年近く制作していたため、納品できなかったとのこと…
鋳造されたのは亡くなってからだったので、現在の姿をロダンは見ていません。
カミーユ・クローデル(Camille Claudel)の作品
実は不勉強で、カミーユ・クローデルについては今回この記事を書くにあたって初めて色々調べました。
24歳も年が離れていた恋人…愛人…共同制作者…ちょっと一言では言い表せない、ロダンと複雑な関係にあったカミーユ。
ロダンが彫刻家として活動し始めたまさにそのころ、とても才能のあったカミーユと出会い、弟子として一緒に制作をしていたようです。
筋肉ムキムキ、肉感が大切、と言わんばかりのロダンの作品たちの中にあって、このとっても可愛らしい女の子の胸像はちょっと異質でした。
ちょっと右に首をかしげて、上目遣いに彫刻家に視線を送るこの女の子は、当時6歳で、ロダンとカミーユが泊まったお城の城主のお孫さんだったそうです。
ロダン美術館には他にもカミーユの作品を展示しているのですが、写真を撮っていない私…
パリから1時間ほどの郊外にカミーユの住まいであった建物を改造した、「カミーユ・クローデル美術館」があり、そちらにも彼女の作品が所蔵されています。
赤ちゃんのうちに亡くなってしまった兄がいて、その子を失った悲しみから、次の子であるカミーユに愛情を注げなかったカミーユのお母さん。
なのに、カミーユの妹、弟は溺愛されて育ち、辛い子供時代を過ごしたカミーユ。
女の子だから、という理由で、とても才能があったのに彫刻の勉強を批判され、それでも作品を作り続けたカミーユ。
彼女の生涯を映画作品にしたものが2ほんあります。
ミュージカル(GOLD〜カミーユとロダン〜)にもなっていますが、こちらはメディア化などされていないようで、現在見ることはできないようです。
カミーユの後半生を描くこちら↓↓
1988年制作、ブルーノ・ニュイッテン監督作。主演女優はイザベル・アジャーニ。彼女の狂女っぷりが見どころのようです。
こちらはもう少し最近の作品で
2017年作、ジャック・ドワイヨン監督。
前出の作品は後半生でしたが、こちらは前半、ロダンと一緒に制作していたころのカミーユの様子が見られます。
プライムでレンタル300円です。
存在感のある「塊」として彫刻を表現しているロダンと違って、カミーユの作品は、塗装していないのに色を感じるような、情感豊かなものが多いように感じます。
どっしりとしたロダンの作品と比較して、軽やかで、華やかな雰囲気を持っています。
後半生で、流産を繰り返したりしていたのに、ロダンが自分より内縁の妻を選んだことで精神的に不安定になり、精神病棟に入れられてしまったカミーユは
自分の作品を自分でかなり壊してしまったそうで、現存するのは90点ほどといいます。
そのうち、ロダン美術館に所蔵されているのは約20点。
ロダンのモデルや、アイデアの源泉ともなっていた彼女を知らずしてロダンは語れないほどの存在でした。
日本では残念ながら彼女のオリジナル作品は見られないようです。先に知っておけばよかったなぁ。
お庭
ロダン美術館と言えばお庭もとても有名です。
きれいに手入れされたフランス式庭園では、お茶やランチが楽しめる、レストランもあります。
お庭のあちこちに彫刻も展示されています。「イヴ」が外の緑の中だと、余計楽園を追放された感じがします。
写真右端に、ベンチが写っています。
広いお庭のあちこちにベンチがあるのでゆっくりできます。
彫刻の足元の芝生で寝転がってる人もいました。
パリの人たちは芝生があるとすぐ寝転がっています。公園なんかでもよく見かける光景です。
金ぴか頭が目立つアンヴァリッドはすぐ近くです。アンヴァリッド内の展示はさほど多くないので、
午前中ロダン美術館に行って、お庭でお昼を食べて、アンヴァリッドを見学する、というスケジュールは結構余裕を持って動けます
お庭側から見たロダン美術館です。
ロダンが気に入って9年住んでいたという、元貴族の屋敷というだけあって、とても美しい建物です。
お茶したい場合は、以下にレストランの詳細があります。
https://www.musee-rodin.fr/preparer-sa-visite/informations-pratiques/cafe-restaurant-du-musee-rodin
朝ごはん/9.9ユーロ:クロワッサンなど甘いパン、フルーツジュース、暖かい飲み物
本日のメニュー/23.5ユーロ:本日のプレート、デザート
パスタ/18.5ユーロ:本日のパスタ、デザート
グルマン(満腹)/20ユーロ:おかずタルト、サラダ、デザート
ティータイム/20ユーロ:ルノートルの茶菓子、フルーツジュース、暖かい飲み物
内装など
なんと、ロダン美術館にはゴッホの作品があるのです。
ロダンは他のアーティストの作品を収集することもしていました。
これなんですかね?棚?すっごい意匠が凝っています。
天気がよかったので窓開けて開放していました。
なんかこういうところがフランスはフリーダム…まぁ展示が彫刻だから、多少窓開けても傷んだりしないからでしょう。多分。
こんなにきれいなお庭で窓開放していても虫とかほとんど入ってこないフランス。
冬が長くて寒いので、日本に比べて圧倒的に虫が少ないからなせる業でもあります。
暖炉!暖炉の装飾、鏡の装飾、壁の装飾、もう全て手が込んでいる。
ギリシャ風の柱と、ギリシャ彫刻の展示がマッチしていて素晴らしい。
ロダンの作品以外にも、ギリシャ彫刻や、様々な作家の作品を展示しています。
入口から入ってすぐの場所です。
窓からの光を受けてかっこよく降り立つ天使の像…窓の方に向けて全裸でポーズをとる男性の像(鋳造の時代)
そして素敵なシャンデリアと丸い部屋を囲む天井の飾り、と見るものが多すぎて目が忙しいです。
日本からのお客さんはあまり多くないですが、観光客は沢山います。
フランスで美術館に沢山行って思ったことの一つとして、
日本の展覧会で「彫刻」を推してることってあんまりないような…?ということ。
「ムキムキ」「ムチムチ」「パツパツ」を良しとする西洋人の体博覧会の彫刻は、あんまりアジア人的には映えないのかもしれないのですが…
絵画を鑑賞する機会に比べて、彫刻の鑑賞機会って非常に少ないような気がしました。(私がアンテナを立てていなかったのでキャッチしていないだけかもしれませんが)
なので、フランスの美術館で生きている人を石に押し込めたような彫刻や、逆に今にも動き出しそうな石やブロンズに出会って、
「彫刻面白いなー!!!」という感覚になれたのはとても大きかったです。
まとめ
「彫刻ってちょっとよくわかんないんだよね」と思っていたとしても、たくさん見ることで面白さが分かる部分があると思います。
沢山の彫刻をまとめて見るのはルーブルもとてもいいですが、まずは分かりやすく、「ロダン」という超有名作家の作品を中心に集めてある「ロダン美術館」とてもお勧めです。
ルーブルほどめちゃくちゃな広さじゃないので、「全部見たぜ」という満足感も得られます。
2013年の映画「ミッドナイト・イン・パリ」にもロダン美術館は出てきていて、とっても美しいお庭が見られます。
下のCMの動画では36秒辺りから少し出てきます。今は配信が無いようで、DVD等を購入しないと見られないのが残念です(そんなんばっかり)
アクセス
公式Webサイト:https://www.musee-rodin.fr/
住所:77 Rue de Varenne, 75007 Paris, フランス
営業日時:火曜日~日曜(火曜を除く)午前10時~午後5時45分まで
最終入館は午後5時15分、閉室は午後5時45分
12月24日と31日は午後5時30分に早期閉館し、最終入場は午後4時45分となります。
お休み:月曜日、1月1日、5月1日、12月25日
ミュージアムパス(PARIS MUSEUM PASS):利用可能
一般的な大人の入場料:13ユーロ
アクセスについての詳細(仏語):https://www.musee-orangerie.fr/fr/visite-orangerie